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空けっぱなしの窓から風が部屋の中に流れ込みカーテンを揺らして更に布団に潜り込んかろうじて頭だけ出している僕の髪を揺らす。
「寒い……」
4月に入ったからってまだまだ寒くしかもここは多目的ビルの25階の住居フロア、吹く風は冷たい。僕は頭まで布団の中に潜り込ませる。それでも寒いのだがここを出て窓まで行くなんてそれこそ凍え死んでしまう。体を丸めればなんとか……ならない、か。
「…………」
寒さですっかり目が覚めてしまった。時計を覗くと短い針は6を差している。いつもなら絶対にこんな時間に起きることは無いが目が覚めてしまったのは仕方がない仕方なく布団から出て即座に窓を閉めた。
「なんで4月に入ったのにこんなに寒いんだよ、異常気象ってやつ?」
周りには勿論誰もいない、それでも言葉に出さないと寒さに負けてしまいそうで思わず独り言を言ってしまった。要するにそれくらい寒いのだ。
「昨日はこんなに寒くなかったんだけどな……」
部屋着を重ね着してなんとか寒さに耐性を作り玄関に向かう。この状況だけ見てれば何故寒いと言いながら部屋を出ようとしているのか疑問に思うだろう。
答えは簡単、部屋の外に温かいこたつがあるからだ。すっかり冷えきって目も覚めてしまったけどこたつで温かくなればまた眠くもなる、もうすぐ春休みも終わり明後日になればまた学校が始まる。しかも去年諸事情により学校をサボり過ぎたので明日ある新入生の入学式で新入生及びその保護者の案内役を担任の先生により命じられた。出席日数はギリギリで足りていたはずなのにどうしてこんな面倒なことをしないといけないのかと聞いたら……結論から言えば合間にして逃げられたのだがやれと言われたなら仕方がない。
でもその前に今日だけはゆっくりと過ごしたいものだ。
……ここがそんなことは許してくれない環境だと言うことは重々承知なのだが。
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