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「あー頭痛いかも……」
プリクラの横にあった椅子に座って項垂れる僕。まさかプリクラがあんなにうるさいものだとは思ってもいなかった。スピーカーから聞こえるうるさいぐらいの女性の声に短い時間でフレームを選べとかなんたら……勝手にゆんがやってたから良いけどさ、こんなに初見殺しだとは思ってもいなかった。
「お兄さんは文字とかスタンプとかしないです?」
なにそれ。
「解んないからゆんに任せるよ」
「了解、任されたのですっ!」
……本当に楽しそうだな。喉かわいたな、目の前に自販機あるけど立ち上がりたくないし……
「冷たっ!」
いきなり首筋に冷たいものが触れて体がビクンとなった。思わず立ち上がって後ろをみたら。
「少し疲れぎみなのではなくて?コーヒーで良ければどうぞ兄さん」
「ビックリしたぁ……」
そこにいたのは制服姿のいろはだった。コーヒーを差し出してクスクスと微笑んでいた。
「ありがと」
そのコーヒーを受け取って再び椅子に座り込む。いろはも横に座って、
「部活の帰り?」
「ええ。あと数ヵ月もすれば中学最後の試合が待っていますしね。それにしても兄さんこそ何故このような場所に?ゲーセンに行くようなキャラでして?」
「あー、それは」
「出来上がったのです、お兄さんっ」
パタパタと手にプリクラを持って出てくるゆん、
「ん、いろはちゃん?」
「ごきげんよう、ゆん」
「どうしていろはちゃんがここにいるです?」
「部活の帰りに偶然立ち寄っただけですわ、そしたら兄さんがいたものですから。お二人は何を?」
「お兄さんとのデートなのですっ!」
違うって。
「な、デート!?」
……いろはの驚いた顔が妙に胡散臭い、笑ってませんか?
「お兄さん、プリクラが出来たですよ」
「どれどれ……うわ」
「プププ……」
なんかいろいろ書いてるな。義兄さんとの初デートって……当の本人が見たら苦笑いだろうなこれは。いろはも笑いを必死に堪えてるが漏れてるし。僕はプリクラをゆんに返す。
「お兄さん、いらないのです?」
「全部ゆんにあげるよ」
「なー、それは違うのです。お兄さんは何も分かっていないっ!」
「クスクス……」
怒るゆんに笑ういろは。なんなんだか……
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