新たな1年

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「あー、おはよう三味さん。朝から難しい顔して何を考えてるのかなー?」 キッチンから朝ごはんを運んでくる結月は僕に気付くなりそんな質問をぶつける。僕ってそんなに難しそうな顔をしているか? 「やめとけ結月、三味の考える事なんて他人からしたら哲学だから、いろんな意味で」 「哲学?」 「ワケわかんないってこと」 「失礼だろそれ」 「事実だろ」 だから失礼だろ。ってか哲学ってなんだよ、僕もよく解んないんですけど哲学。 「それで三味さんは何を考えていたのかな?」 僕の真正面に座って箸を配る結月。 「ありがと。何を考えていたって言われてもな……今日久しぶりにクラスの友達に会うけどあんまり名前覚えてないなーって」 「えっ……去年1年間を一緒に暮らしたんですよね。そのクラスメイトと」 僕の学校は高校2年から3年に上がる時にクラスの変更は無い。 「……正直物覚えも良い方じゃないしあんまり学校やクラスに興味も無かったからさ」 「因みに今のクラスで名前を覚えている人は何人いるの?」 えっと、 「フルネームは二人かな」 「なっ……!」 ドン引きする結月に知ってたと言わんばかりの顔の京助、なんなんだよ一体。因みにその覚えているうちの一人はここにいる相川京助だ。 「それは逆に凄いかもしれない……四十人弱いるクラスメイトの中で二人しか覚えていないなんて。まさに哲学」 だからなんなんだよその哲学って、流行んないからな。 「あ、でも今日からは私がクラスにいますから名前がわかる人は三人だねっ!」 同じクラスになること前提ですか。でもそれも悪くないな、結月が同じクラスだったらきっと楽しいだろうし。 「あ、でもごめん。僕結月の名字覚えていないや」 「嘘だと言ってよ三味さんっ」 「ククク……」 本当に見ていて飽きないな。因みにこれはふざけているわけじゃ無くて本当に知らないのだ。いや、知らないは的確な言葉じゃ無いな。忘れた。 「わざとじゃないですよね」 「うん」 知っていても知らないフリすると思うけど。 「はぁー、本当に信じられない。だったら今覚えてよ、私の名前は佐倉結月っ!」 「あー、そんな名前だった気がする」 「気じゃなくてそんな名前なんです。全く、麻里ちゃんはこんな人の何処に惹かれたんだろうか」 「?」 最後の方はよく聞こえなかった。
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