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「あれ、そう言えばいろはとゆんは?」
食卓を囲むように座っているのは僕と京助と結月だけ。れんとさんはこの時期が一番忙しいからと言って会社に泊まりがけで仕事をしていてこの場にはいないがそれを除いてもあと二人足りない。
「いろはちゃんがゆんちゃんを起こしに行ったんだけど春休みだからって生活リズムが堕落しちゃったみたいで朝方まで廃人御用達のオンラインゲームをしていたみたいで起きないんだよね」
「……何やってんだよゆん」
彼女らしいと言ってしまえばそれまでなんだけどさ。朝のゆんは低血圧でなかなか起きないからな。さすがのいろはでもかなり苦戦するんじゃないか?
とまあそんな事を考えていると、少し汗をかいたいろはがゆんの部屋から出てきて、
「すいません、どなたか手伝ってはくれませんこと?」
そのお嬢様言葉とはとても似合わない疲れたようなジト目でそんな要求をしてきたがいろはの目はあきらさまに僕を見ていている。
「だそうですよ三味さん」
「頑張れよー」
「あのさぁ……」
こいつらは……朝は低血圧だからあまり動きたくないんだけどな。だいたい今日から学校って分かっているんだからゲームは程々にしてください。
言われるがままにゆんの部屋に向かう。そう言えばゆんの部屋に入るのは初めてだ。別に行きたいわけじゃが……
「って意外に少女趣味な部屋してるな」
機械大好き少女だからなんかよく解らない部品とかでゴミゴミしてるかと思ったんだがタンスの上にはぬいぐるみが並んでいたり……その横に(おそらく)アニメキャラのフィギュアが数体置いてあるのは気になるが、まぁ予想とは反していたわけだ。あといい匂いもするし。
「ってそんな話はどうでもいいんだよ」
「あら兄さん、どうかしまして?」
今分かった。いや、正確にはもっと前から分かってはいたんだけど。
「いろは、何がしたい?」
「何、とは?」
こいつ僕の反応を見て楽しんでいるな……。さっさとゆんを起こして朝御飯だ。
「ゆん、入るよ」
寝ているのは分かっているが一応ノックはして寝室に入る。
「起きないと遅刻するよゆん」
部屋に入った僕はその体に合わない大きなベッドで布団をかぶって寝ているゆんに近づく。上から覗くとそれはもう気持ち良さそうに小さな寝息をたてて寝ていた。
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