新たな1年

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「京助君はともかく三味さんが不真面目なのは意外かな」 「そうか?」 「うん、だってどっちかと言えば財閥の御曹子だし家や裏ではともかく学校とかじゃいろはちゃんじゃ無いけど猫被ってそうだし」 「いやあ、そうじゃないんだよ結月」 京助の言う通りだ。あれはどっちかと言えば、 「あ、もしかして面倒なだけとか?」 「ご名答」 「おっしゃ!」 楽しそうにばっと結月に指を指す京助に大袈裟に喜ぶ結月。いったい何が彼等のテンションをそこまであげるのだろうか。そしてさすがは結月、妙に鋭い。だがあまり五月蝿くなるのは歓迎できないかな。 「うわっと」 一番はしゃいでいた結月もそれに気づいたみたいで少し恥ずかしそうに上げていた手を下げる。これはまずい、登校中の回りの生徒の目線を男女問わず一気に集める。何度も言うが結月は顔だけは超一流だしどっちかと言えば美人系じゃ無くて可愛い系、そんな子が無邪気に騒いでいたら視線を集めるのは必然だ。それに横を歩いているのは細マッチョ系のイケメンで学校の女性人気の高い京助だ。 二人から離れて歩こうかな。 「なーんかやたらと視線を感じるな」 やはり恥ずかしかったのか下を向く結月に対して回りをキョロキョロと見る京助。 「そりゃあ二人みたいな美男美女が楽しそうに登校していたら嫌でも注目の的だよ。悪いけど僕は少し離れて歩くよ」 「ちょい待った」 有言実行、すぐに離れようとした僕のその願いは叶う言無く京助に襟を掴まれる事によって終演を迎える。 「なんだよ京助」 「過度な謙遜は嫌味にもなるぞ」 ……何を言っているんだ? 「何度か話したがもう一回言ってやる。お前はお前が思ってる以上に普通に格好いいぞ」 なんだそのカミングアウト。あと普通に格好いいってどのレベルよ?いまいち分かりにくいな……。 「何が言いたいの?」 「だから言っているだろ、過度な謙遜は嫌味にもなるって」 ……この学校の生徒は少し勘違いをしている。あまり社交的でなくそれこそ学校では回りとあまり喋らない僕はクールでストイックと言う謎のレッテルを貼られた。百歩譲ってストイックは認める。だが間違ってもクールでは無い、断じて無い。 ……そんな話はどうでもいいんだよ。
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