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「それでその話が僕が掴まれたのとどんな関係が?」
京助は自分に力があることを分かっているのか首が地味に痛かった。
「関係は待ったく無い、ただちょっと聞き捨てならなかったからつい掴んでしまった。それは謝る。でも逃げようとした三味もどうかと思うぜ?」
だって注目集めるのは嫌だし。
「結月を俺一人に押し付けんなよ」
「あ、そっち?」
「ひどっ!?」
横から飛び出した大声に耳がキーンってなった。どんな声帯しているのか知らないけどもうオペラ歌手とか目指したほうがいいんじゃないの?
「私ってそんなに駄目ですか?」
「うん、それを気付いていないあたりが」
なんてのは口が裂けても言わない。
「ショボーン……」
あ、言っちゃった。でもそれぐらいが疲れないから良いかもしれない。
「でもさ、でもでもそれが私のアイディンティティなんだからやっぱり失ったら駄目な気がするんだよねー」
「「………………」」
重々解っていた事だし知ってもいた事でもあるがどうやら無駄なようだ。どこまでポジティブなんだよ結月は。僕のネガティブを分けてやろうか。
「そう言えば京助ー」
「なんだ?」
「おっと私の話はスルーかい、放置プレイってやつですかい?」
…………
「始業式出る?」
「出るつもりだけどさ、サボる気か?」
「サボるつもり」
サボってもバレないし。ならあんな面倒なのに出る理由もさして見当たらない。
「俺はとりあえず出るよ。サボりがバレて里美ちゃんに怒られても馬鹿みたいだし」
里美ちゃんとは先生の名前、フルネームは荒垣里美だ。教え子からちゃん付けで呼ばれているのも先生の苦労の1つだろう。僕は荒垣先生と呼んでいるがなんかもう逆に名字で呼ぶの僕ぐらいだから距離を感じるとか言ってた気がする。
「じゃあ終わったら連絡ちょうだいよ、僕は屋上でひなたぼっこしてるからさ」
「あ、じゃあ私も」
「りょーかい三味、二人で楽しくひなたぼっこしなよ」
「いや、一人でのんびりと……」
こうなった結月はもう振り払える気がしない、仮眠でもとろうかと思ったけどこれはもう無理かな。
「ほらほらー、こーんな美少女とお喋り出来るんだから楽しまないとさー」
美少女は認めよう、だがそれを自分で言ったら駄目だろ。
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