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体育館へ向かった京助と別れ僕は三年のクラスがある校舎の屋上を目指して階段を上がる。そんな僕の後ろを軽く跳び跳ねながら着いてくる結月。わざわざそんな疲れるような飛びかたしなくても。
「あのさー三味さん、今更聞くのもなんだけど屋上って鍵開いてるの?普通って危ないからって施錠してるよね」
「閉まってるよ。でも鍵持ってるから」
ポケットからキーケースを取り出して後ろにいる結月に見えるように軽く腕を上げた。
「……なんで持っているの?」
「ん?前に1回クラスの集合写真を屋上で撮ることになったんだけどその時に鍵を粘土に押し付けて型をとって複製した」
「……なんて言うか凄い無駄な行動力ですね。あれですか、無駄に洗練された無駄の無い無駄な行動みたいな?」
「なに言ってんの?」
「私から言わせてもらえば逆に何やってんですか。犯罪ですよ?」
それは否定しないけど、
「犯罪とか君にだけは言われたくないよ。それにバレなきゃ犯罪にはならないんだよ」
「やっぱ三味さんって真っ黒だね。ま、そんなとこも含めて一緒にいて楽しいんだと思うけど」
「そう、ありがと」
振り向きもせずに答えた僕は階段を乗りきり鍵のかかったドアを開ける。そしたらとたんに流れ込んで来る少しだけ冷たい風。しかし一歩外に踏み出せば眩しい太陽が照らしてその光は寒さと混じり溶けた。
「あー、日向がぽかぽかで暖かい。それに凄くいい眺め」
「そうだね」
フェンスに背を向けて座る僕の横では景色を見て興奮する結月がいた。僕も座ったまま少しただけ後ろを見た。そこに広がるのは見渡す限りの教育機関。
この東風学園の半径十キロには四つの大学を始め小中校合わせて十八の学校がある。その景色は壮大で見たものを驚かす。
「やっぱりここは都会だね。私の昔の学校とは大違いだよ」
「ここは別に都会ではないとは思うけどそれなりに賑やかかな」
計画的に学園都市として作られたここは都心とは少しだけ離れている。何も無かった広い土地を切り開いて作られたと聞いたこともあるし。だがまぁ下手な町よりはよっぽど活気が溢れているけど。
「ここで私の新しい学園生活が始まるのかと思うと心臓のドキドキが止まらないよ」
そう言って僕に並ぶように座る結月。横目で見たら顔が少しだけ赤い気がした。成る程、楽しみなのは本当のようだ。
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