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いろはの体の80%はきっと毒素で出来ているのだろう、だから息をすると自然と毒を吐く、そんな生き物だ。
「兄さんは失礼な事を考えているとすぐに顔に出るから気をつけた方がいいですわ。あ、温かい……」
ギリギリ8人は入れるであろうこたつのわざわざ僕の隣に潜り込むいろは。狭いんだけど。
「ジャージ着ているけどこれから運動?」
「はい、これからマカロンの散歩ついでにランニングです。知っていますか兄さん、健全なるお肌は健全なる肉体と健全なる青春にやどるのですわ」
フフフと声を殺しながら笑ういろは。まだ皆寝てるという配慮ぐらいは出来るようだ。
「絶対に違うからなそれ」
もはや意味が解らないし。
「それでマカロンは?」
「え、兄さんの後ろにいるではありませんか」
「うわっ……」
後ろを見ると確かにいた。こたつのふとんかと思ったら……。
「おはよ、マカロン」
「ワン!!」
マカロン、それはいろはの飼っている犬の名前だ。種類はゴールデンレトリーバー、まだ1歳でかなりやんちゃな奴だ。
ズルズルズル。
「…………」
マカロンは僕の服のはしを加えて引っ張る。やめれ、のびるのびる。
「マカロンも兄さんと散歩に行きたいと仰って?」
そう。
「僕は行きたくないよ、ごめんねマカロン」
ズルズルズルズルズルズルズルズルズル……。
しかし引っ張るのを止めない。ゴールデンレトリーバーは賢い犬だから言ったことは分かるはず、
「わざとか」
子供とはいえどなかなかの力で引っ張る、僕は必死にこたつに張り付く。しかしわんぱくな年頃の大型犬に対して起きたてほやほや朝は低血圧の僕が勝てるはずも無く、これ以上こたつ布団を掴んでいたらテーブルが落ちそうなので仕方なしに手を放す。
「分かった、行くから着替えさせて」
こたつから出ていったん自分の部屋に戻る。マカロンに引っ張られ少し伸びた部屋着を脱いで適当に運動しやすそうな服に着替えた。
「外寒いよなぁ……」
仕方なしに覚悟を決めて部屋を出る。そこには準備万端ないれはとマカロンの姿。
「お待たせ、行こうか」
「ええ」
「ワンっ!!」
靴を履いてエレベーターに乗り込む。
……やっぱり気が向かないなぁ。
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