fragment -機械仕掛けの女神-

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「……ぜんぜん分かんないんだけど」 れんとさんから貰った簡単な地図を何度も凝視するがさっきから歩くにつれてもう自分がいる場所すらわかんなくなっていた。スマホの充電は空だし……あと暑い。まだ3月なのだからこの気温はおかしいだろう、着込みすぎたか。 「三味さんもしかして方向音痴ですか?三味さんらしからぬ意外な弱点ですね」 うるさい西野園。方向音痴って言うな、この簡易な地図が悪いんだよ。 「ちょっとその地図貸してください」 「おいちょっと……」 「えっと、ここが国道だから……今私達がいるのがここでマンションがここですね。はい、分かりました三味さん。付いてきてくださいね」 そう言って僕の手を掴んで前を歩いていく西野園は何故かテンション高めでなんか振り払えない空気だった。 「ねえ西野園、もうちょっとゆっくり歩かない?あんま早く歩いたら汗をかくから」 汗をかくのは嫌いじゃないけどそれはスポーツとかする時とかの話で今はそんなノリじゃないから汗をかいたら不快なだけだ。そんな僕を振り返った西野園は僕の格好を少し見てから、 「結構着込んでますね三味さん。三月って冬から春への移り変わりみたいな季節ですけど実際はいきなり暑くなりますからね。地球温暖化の影響でしょうか?」 「知らないよそんなの。地球温暖化でもなんでもそんなことはどうでもいいけど今大事なのは僕が汗をかきたくないって事。西野園は暑くないの?」 「時間ギリギリまで寝ている三味さんとは違ってちゃんと朝はニュースで天気予報を見ましたからね。今日の天気は快晴ですし気温も上がると言っていましたからね。でも少し薄着を選べばとても過ごしやすい気候だと思いますよ」 ワンピースに薄いパーカーを羽織って下はブーツを履き頭にはニット帽をかぶっている。確かに少し涼しそうだ。家では絶対寒いと思ってたけど見事外してのは僕の方だったか……あの時は眠くて頭が回らなかったから。 「だいたいまだ午前中の10時過ぎだよ。早くない?」 休日の九時なんて寝ている時間だ、しかも流石に朝は寒いから布団からは出たくはない。 「あ、次の電車まであと七分しかないですよ三味さん。走りましょう!」 そう言って再び手を掴み走り出す西野園。こいつ絶対話聞いてないだろ……。
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