12人が本棚に入れています
本棚に追加
「私が感じている事をいつかは三味さんに感じて欲しいんです」
「西野園は西野園で僕は僕だからね、もしかしたら一生分からないかもしれないよ?」
そんな僕の言葉にコーヒーを一口飲んだ西之園はこちらを見てからぱっと笑って、
「大丈夫ですよ」
そう答えた。
「私なんかが感じることができたんですから絶対に三味さんにも感じることができます。それに三味さんが気づいてくれないと私は少し寂しいです……」
今度は少し遠くを見て悲しそうな表情をする西野園、本当に表情豊かなやつだよ君は。なんだか見ているこっちまで少し虚無感を感じる。
「まあ西野園がそう言うのならきっと僕にも解るんだろうな、その幸せが」
僕の大親友がそう言うのだからきっとそうなのだろう。それに西野園を信じたいし彼女の期待を裏切りたくはないから。
「では期待して待っていますね」
そう言った西野園はなんだかとても優しく、そしてなんだか遠く感じた。何故だろう、心の奥が少しズキズキする……。そしてその言葉を言うのまで待っていたように電車が大きな音をたてて駅に到着した。僕たちが立っていたのはドアの前では無かったが電車に乗る他の客はほとんどいなくすぐに乗ることができた。
「えーっと……れんとさんに貰った地図によればここから二つ先の駅で降りたらもう歩いてすぐの距離ですね」
次に口を開いた西野園はまるでさっきまでの流れや空気を断ち切るようにいつもの調子に戻っていた。僕もそんな彼女に合わせるように、
「ねえ、今更なんだけどさ、その距離なら別にバイクでも良かったんじゃないかな?」
僕もそうだが西野園もバイクを持っている。歩いたり電車に乗ったりするよりよっぽど速く着くだろう。もしかしたらもう今頃は着いているんじゃ?
「確かにそうなんですけど今は少し忙しいみたいであちらにある駐輪場が使えないみたいです」
「成程ね……」
バイクの不便なところの一つとして止める場所の確保だ。普通の車専用のコインパーキングに止める訳にはいかないしかと言って街の中にある駐輪場のほぼ全てが自転車専用だ。これから行く場所には諸事情によってバイクを止められる駐輪場はあるが使うことは出来ない。それはまたおいおい説明すると思う。
最初のコメントを投稿しよう!