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「でも私は嬉しいですよ、三味さんと一緒に街の中を歩いたり電車に乗るのは新鮮ですから」
「そんな事を平然と言うあたり西野園はすごいと思う」
「三味さんにだけは言われたくありません」
「なんで?」
「なんでって……三味さん普通に聞いている側が恥ずかしくなること言うじゃないですか」
「そんなこと言ったっけ?」
「言ってます」
全く身に覚えが無いのだが彼女が言うならきっとそうなのだろう、でも全然思い出せない……教科書のまる暗記とかなら簡単なのにこんなことは何故か忘れっぽい。一体どうなってるんだ僕の脳みそは。
「三味さんは興味のないことに関しては簡単に忘れますからね……」
あ、西之園がジト目で僕を睨んでくる。これは少しレアかもしれないな。
「なんか変なこと考えてませんか?」
「別に?」
「そうですか」
そう言って前を向く西之園、発信した電車に揺られながらしばらくの無言状態が続いた。他のお客さんも殆どいないしなんか改まって二人きりになると気まずいというかかゆいと言うか、こんな時なんて言えば解らない。
「ねえ西之園」
話のネタなんてなかったけどこの空気に耐えられなきなりなんとなく話しかけてみた。が、
「すぅ……すぅ……」
「寝てる……だと」
この短時間で寝るか普通、降りる駅までそんなに時間無いのに。
「全く……こんなところで寝るなんて、平和になったものだな」
これも彼女の言う充実した毎日、幸せの時間なのだろう。僕の肩に寄り添って幸せそうに寝ていた。あといい匂いがする。
「こんな時間が来るなんてあの頃は思ってもいなかったからな。人って変わっていく生き物なんだって我ながらつくづく感心させられるよ全く」
寄りかかられているのであまり体を動かす訳わけにはいかないから溜め込んだ息を吐き出して揺れる電車の天井をなんとなく見つめた。
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