fragment -機械仕掛けの女神-

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そんな彼女と僕の違いは生きる理由の違い、ただそれだけだったと思う。正確には当時の西野園は自暴自棄になっていてひたすら死ぬのを待っていただけだったから生きる理由なんてものは無かったのだろうが僕にはあった。 それはとある親しい人からの言葉だった。その言葉で僕には生きる理由ができ、そして死ねない理由も。そのたった一つが僕と彼女の違いだがその一つは大きい、そしてとても大事なことだから。それを知って欲しかった僕は西野園に現実を知って欲しかったから結構ひどい事も言ったし酷いことも言われた。でもそれで彼女は再び希望を見つけたみたいで死んでいた瞳は葵いサファイアのような光を取り戻しそして僕の家に来た。カトレアさん(母さん)も可愛い娘が増えたように喜んでそれ以上に僕がそんな行動(女の子をカトレアさんに紹介)をしたことにたいそう驚いてすっごくニヤニヤしていたあの笑顔をよく覚えている。やな話だ……。 そんなこんなで彼女は僕の家族になったんだけど正確には西野園が僕の家に来たのはそれから一年後の話。それまで彼女は財閥関連の病院に入院と言う形になった。 先にも書いたが彼女は事故で右足を無くした。その為義足を作る必要があるんだが父さんとカトレアさんが気を回してくれたのか財閥の技術を集結させたトンデモな物が出来上がった。普通の義足は取り外し可能なものだが西野園のそれは特別製で神経を接続する特殊なものだった。何回かお見舞いに行ったのだが激痛に耐えてリハビリしている西野園を見ているといろんな感情がこみ上げるが少し嬉しかった。孤児院の端っこで人形のようになっていたのにこんなに必死に自分の足で歩こうとしているんだから。担当の紫観さんというドクターに聞いたら驚く速度で回復しているとの話でもう笑みがこぼれた。そんな僕を西野園が無表情のジト目で見ていたのは開き直って気にしない。 初めにも書いたが西野園の体重が重いのは義足のせいだ。高性能でなにが入ってるかなんて僕には解らないけど。 とまぁ、これが僕と西野園の出会い及び轍みたいなものかな。友達を作ろうとしなかった僕の初めての友達であり家族でありそして大親友、それが彼女。頭脳優秀、スポーツ万能、美人で他人思いでいいやつで涙脆くて感情豊か。それが僕の知っている西野園麻里という素晴らしい女性だ。
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