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「まさか行き道より目的地の方が人が多いなんて思わなかったよマジで」
「すごいですね、ある程度人が集まっているとは思いましたがまさかこんなにいるとは思いませんでした。ここまで集まると少し圧巻です」
僕たちの目的地であるここはとある高層複合ビル。下層階は複合商業施設、中層階は様々なテナント事務所、その上は住居フロアとなっている。明日からこの高層ビルの25階に引っ越す僕らは少し遅いが下見に来たのだ。因みに住居フロア及びテナントへの開放は昨日からで一般客への開放(オープン)は明後日からである。
「ねえ西野園、なんでこんなに人が多いの?」
周りを見渡す限り凄い人ごみはかなり圧巻、僕は基本お祭りとかはいかないけどもし行ったらこんな感じなのかな。でも周りを見る限りカメラマンとかキャスターとか数人ずついるしなんかテレビで見たことある政治家や芸能人もいるし。
「あの人達もここに住むのかな」
主語のない僕の振りに対して僕の見ている方向を見て意味を理解する西野園。なんかすいませんね。
「この建物は簡単に言えば最新の高層複合ビルですからね。住むこと自体がその人のステイタスになるわけです、そして有名人が集まればさらにこのビルの知名度が上がる、そんなところです」
「ふーん、そんなマンションにこれから住むのか」
下から眺めて上が見えない摩天楼、いったいこのビルにいくらかかってるのだか。
「私は楽しみで心が躍っています、25階ともなると眺めも凄く良さそうですし」
ふふっと笑う西野園、そんな光景に少し浸っているといきなり後ろから、
「みーんな、ひっさしぶり!!」
背中に走った衝撃、誰かがぶら下がっているのか首が締まっている。
「三味さん麻里ちゃんいろはちゃんひっさしぶり!!」
もう声でわかる、それにこの付き合っていて疲れるテンションは一人しかいない。
「結月久しぶり、あと離れろ」
「二言目にはそれですか酷くない?」
「家族とか彼女でもないのにいきなり後ろから抱きつくやつにはその程度の扱いで十分だ」
「あいかわらず酷い扱いですわね結月さん。見ていてとても面白いのでそのままで構いませんが」
「いろはちゃん相変わらずの毒舌だねー。しまいには泣くよ?」
その言葉とは裏腹にとびっきりの笑顔の結月がそこに立っていた。
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