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「別に泣いても構いませんが同性の涙に心が動くほど腐ってはいませんことよ」
「……良くも悪くも三味さんと同じ血が流れているよねいろはちゃんは」
「光栄です、褒め言葉として受け取りますわね」
「あれ、違うんだけどなー」
完全にいろはにあしらわれているな。でも全く哀れに感じないから不思議だな。
「麻里ちゃーん」
「あーはいはいよしよし」
西野園に抱きつく結月。見た目だけではただの友情?かもしれないがこの二人、(結月は)中身はともかく美女と美少女だ。どうしても周りの目が集中するわけで、
「兄さん、いったんこの場所を離れませんこと?」
表情はいつもどおりだが目が笑っている。こんな状況でよく楽しめるな、さすがと言うかなんというか。確かに僕も逃げたいけど西野園が可哀想だからな。
「結月、ちょっと離れようか。人目もあるからさ」
「あ、ごめん」
周りを見て察したかゆっくり離れる。そんな恥ずかしそうな顔するなら最初からしなければいいのに。
「人目があったから助かりましたわね結月さん」
「あ、うん。人目が無かったら私ご愁傷様だったかも」
そう言って僕を凝視する結月といろは。その少し後ろで西野園が苦笑いしているわけで、
「お前ら僕をなんだと思っているんだよ」
「無慈悲な王」
「暴君」
……………、
「勝手に言ってろ」
……案外人がいなかったら本当にデコピンくらいはしていたかもしれない。デコピンって地味に痛いからな。
「そんな話はどうでもいいとしてれんとさん見てない?」
「あ、それならあそこで何か質問攻めにされていますよ?」
人ごみの中を指差す結月。その人差し指ぼ先をよくさがすとマスコミ関係らしい人たちに囲まれているスーツ姿のれんとさんを見つけた。この高層ビルを企画、プロデュースしたのはれんとさんだ。
邪魔をしないように少し近づくとインタビュー陣との会話が拾うことができた。
「はい、このビルは他の多目的商業ビルと差別化を図るために質の良い商品を出来るだけ安く売るように努力しています。その政策の一つとして各テナントさんへのビルの使用料を極力抑えています。他にも……」
「れんとさん流石といいますか見事ですね」
「そうだね」
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