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元は何なのかすら分からない瓦礫に囲まれて僕といろはに対峙するように西之園は立っていた。
「私はここに残ります、自己満足かもしれませんがもう1人の貴方を助けたいから……」
西野園はそう言って静かに微笑んだ。
「正気ですの姉さん、もう二度と戻って来られないかもしれないのですよっ!?」
本当無茶を言って……!!
「だったら僕も残る、君1人が体を張って守る事は無いじゃないか!」
「それは駄目です。三味さんは私達の世界に必要な人なのですから。時間がありません……私なら大丈夫です、絶対に全てを終わらせて貴方の元に戻りますから」
決意が堅い、こうなったら彼女はテコでも動かないだろう。
「私は絶対に嫌です、やっと家族ができたのにこんなことって……」
泣き崩れる少女。それを見た西野園は優しく微笑んで、
「大丈夫ですよいろはさん、全てを終わらせて絶対に帰りますから。私が嘘をついたことがありますか?」
しゃがみこんで顔の高さを合わせて優しく微笑む。
「ひっく、うぐっ……ありません」
「なら姉さんを信じてください……私なら大丈夫です」
「絶対に、絶対に帰ってきてください……」
「はい、約束です」
指切りを交わす二人。それが終わった西野園は立ち上がり僕を真っ直ぐ見つめる。
「私が三味さんから貰った全て、少しずつでも返していきたいんです」
彼女は優しすぎる、それは長所であり短所にもなる。もう二度と会えなくなるかも知れないのに。
「……もう決めたの?」
「はい、決めました」
微笑んでいた彼女の顔が少しだけ揺らいで頬を涙が通る。
「馬鹿だよ君は」
「……誉め言葉として受け取ります」
僕は西野園を抱き締めた。ずっと一緒に居られると思っていたのに……これからやっと楽しい時間を過ごせると思ったんだけどな。
「待っているから、絶対に戻って来なよ。約束だからね」
「はい……絶対に貴方の元に戻ります、約束です」
その言葉を聞いてゆっくりと離れる。
「じゃあまたね……」
「はい、また会いましょう……」
その直後、西野園の姿は僕の前から消えた……
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