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ある時、中年男性社員の大村に対して女性モノの下着の写真をメールに添付して送りつけた。大村には女装癖があったのだ。
翌日、大村が会社を休んだのを見て伊藤は大笑いをした。きっと漏洩調査に躍起になっているに違いない。
またある時には、総務部の女性に対してデートのお誘いを画策していた、若い営業マン島崎のメールを覗く。
島崎は甘いマスクをしていて、女にモテそうだ。伊藤は真っ先に怪しんだ。何か裏は無いものだろうか。
会社のSNSには痕跡を残さずとも、きっとハンドルネームで一般SNSを利用しているはずだ、と考えた。
伊藤がメールの履歴を辿っていくと、他の社員に向けて打ったメールにそのハンドルネームが含まれていた。
ハンドルネームは『イソップくん』。童話に基づく嘘つき少年なのか、伊藤の胸は高鳴った。
調べてみると立派な写真があるではないか、とっかえひっかえの女の子とデートをする写真が。
全てをダウンロードし、総務部の女性に送りつけた。男のその後のメールでは『なぜ俺が振られたか分からない』とあったので、伊藤はまたまたほくそ笑んだ。
そんな傍若無人な活動を続ける伊藤でも、一度だけ危ない事があった。
伊藤の上司に『社内ネットワークが覗かれているかもしれない』と密告した人間がいたのだ。
情報管理部全員のパソコンが調べられた。しかし、全権限を利用している伊藤が犯人だとバレるわけもない。
電網の神に抗う事は誰にも出来ない。
しかし、誰だ。監視されているなどと気づいた人物は……。おそらく、自分がちょっかいを出した人間だろう。
伊藤は毎日3人までおちょくると決め、記録をつけていた。
その人物をすぐに特定出来た。2週間前にからかった経理部の女、佐々木だ。
佐々木はアラフォーを目前にした売れ残りだった。複数のお見合いサイトから受信メールが来ていた事を伊藤はからかったのだ。
──『徹底的に追い込んでやる』
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