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どれくらい行った時だろうか、激しく肩を掴まれ私は立ち止まった。
徹だった。
「戻るぞ」
「ヤダ!!!」
「ヤダじゃないっ!」
私はビクッとなって下を向いた。
徹とは中学の時からの付き合いだが、私が徹に怒鳴る事はあっても、徹が私に大声を上げた事は今まで一度も無かったと思う。
「杏純ちゃんと杏子ちゃんどうすんの?2人の彼氏だって来てんだろ。お前のワガママで今日を台無しにすんのか?」
徹にそう言われ、ハタとそれに気付く。
「ごめん。でも、私……やっぱ徹と別れたくない」
その言葉に、徹は驚いたように私を見る。
「え?何それ。それが泣いてる理由?みんなに心配かけて?」
私がそれにコクンと頷くと、徹はフッと鼻から息を漏らし軽く笑う。
「お前本当バカ。マジで別れたんなら、速攻アパートの鍵返して貰うし」
「へ?」
「だってお前いつもじゃん。てか、別れたくないってハッキリ言われたのは初めてだけど。俺、お前と別れてないからね」
ポカンとする私に、ハイと1万円札が差し出される。
「みんなにちゃんと謝れよ」
徹はそう言いながら、私の肩をガシッと抱いて歩き出した。
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