第1章

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ある場所に着くと、ハルトくんは立ち止まってわたしを見る。 「あの、本当に休むだけだからね。俺もこんなひなちゃんに何か出来ないし」 必死にそう話すハルトくん。 わたしはなんのことか分かんなくて、うんうん、と頷く。 ここ、どこだろ? HOTELって書いてあるけど。 今のわたしにはそんな言葉すら理解できない。 「じゃあ、入るよ」 ハルトくんが中に入ろうとわたしの手を取ろうとしたけど、 わたしは逆方向にぐいっと腕を引かれた。 「こんなとこで何してんの」 聞き覚えのある声。 きだるそうな。 「ふぇ………ゆう?」 後ろを振り向くと、祐がわたしの手を引いていた。 何で祐がここに? 「あ、ひなちゃんの友達?」 ハルトくんは驚いたら様子で祐を見る。 「は?」 祐のあからさまに機嫌の悪そうな声が聞こえる。 祐はぐいっとわたしを引っ張ってすっぽりと祐の腕の中に入れ込んだ。 「こいつ、俺の彼女だから」 そう一言言った。 さすがのわたしもこの言葉は理解できた。 「ゆ、祐何言って……むぐっ」 慌てて反論しようとするわたしの口を祐は口で塞いだ。 マウストゥーマウスってことで、 つまり、 キス。 離れようともがいても祐に押さえつけられてるし、お酒のせいで身体に力は入らない。 「ふぁ……」 ハルトくんに見られているのも忘れるくらい、甘くてクラクラする祐のキス。 やっとの思いで唇が離れると、息のできなかったわたしはぷはっと空気を取り込む。 「わかっただろ?もう、ひなに近づくな」 祐はそう言い残して、わたしをひょいっと抱っこしたままその場を後にした。 ハルトくんは、 「あ、はい……」 とポカンとした顔でその場に立ち尽くしていた。
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