第1章

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ズンズンと無言で歩いていく祐。 わたしを抱っこしたまま。 「ね、ねぇ、祐、おろして」 酔いも冷めてきて、呂律も上手く回り出した。 祐はわたしの言葉を聞いてぴたりと止まり、わたしを肩から下ろす。 でも、手はわたしの肘を掴んで離さない。 「ゆ、祐?怒ってるの?」 祐は下を向いていて顔を見せてくれない。 余計に不安を煽る。 「抱っこされるの嫌だっけ?」 祐の口から出てきた言葉はよく分からないものだった。 「え、あ……それは、イヤだよ。恥ずかしいもん」 周りの人の目だって痛いし。 「昔は抱っこしてってうるさかったのに」 「だって、そんなの小さい頃の話………って、祐?!」 祐はまたわたしの言葉を聞かずに抱っこし始める。 お姫様だっことかそんな可愛らしいものではなく、なんか子供扱いのような抱っこ。 ものすごく恥ずかしいけど、今の祐には何を言ってもしょうがないみたいだ。 祐の家に着いて靴を脱がされ、祐の部屋まで連れていかれた。 部屋について祐はベットにわたしを叩きつけた。 「ちょっと、祐!痛いよ……」 お尻からズドンっと落とされたので、お尻が鈍く痛んだ。 祐は無言のまま、わたしに覆いかぶさってきた。 これじゃあ、身動きもとれない。 「さっき、あの男とホテル行くんだったんでしょ?」 「ホテル……?」 「すっとぼけちゃって。ひながそんな淫乱だったなんた知らなかったよ」 いつもは口数の少ない祐が喋ってる。 それは、たぶんすごく怒ってる証拠だ。 しかも、淫乱だなんて…… 「い、淫乱なんて、ちがうもん」 「だって、合コンで会った男とその日のうちにホテルなんて相当だと思うけど」 「ホテルなんてわたし知らなかったし……」 「知らないわけないだろ。そうやって純情装って男騙してるわけ?」 「騙してるって、そんな……」 祐の言葉にじわりと目に涙が溢れてくる。 「なんでそんな意地悪ばっか言うの……?」 大人っぽく色気のあるような涙ではなくて、ひっくひっくと子供のように泣き出す。 泣き顔を見て一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに顔は変わった。 「そうやって泣いてれば?」
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