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「ってなわけで彼氏がさー。本当に下手なんだよねー」
「下手って何が?」
お昼も食べ終わってお昼休み特有のガールズトークが始まった。
わたしと一緒にいるのは、佐々木麗(ささきれい)。
麗ちゃんとは高校に入ってから仲良くなってほぼ毎日一緒にいる。
長くてキレイな黒髪をもつ麗は、
容姿端麗で成績もいつもよくて、家もお金持ちらしい。
それで、ちょっと周りと比べると大人っぽい。
何でわたしと友達になったかよくわからないけど、面倒見のいい麗ちゃんとすごく性格が合う。
「何がって、コレだからひなは……」
ふう、とため息混じりに麗ちゃんは話す。
いっつもこんな感じで肝心なところは教えてくれない。
「だから、何が下手なの?」
ぷぅっと頬を膨らませて聞くと、麗ちゃんが口を開いた。
「だから、エッチよ!エッチ!」
「……へ?!」
何の躊躇いもなしに言う麗にビックリしたというよりは、こっちまで恥ずかしくなるような思いだ。
「きょ、教室でそんなこというなんて、ハレンチだよ」
わたしが赤い頬を手で押さえながらそう言うと、
また麗ちゃんはため息をついた。
「あんたねぇ、そんなことでいちいち赤くなっててどうすんのよ」
「そんなことって……」
「今時、高校生で初恋もまだなんて珍しいわよ」
そうなのだ。
わたし、望月比奈(もちづきひな)は現在高校1年生なのにも関わらず、15年間恋というものを知らない。
周りが恋や愛やなんて言ってるけど、わたしにはさっぱり分からない。
「かっこいい人見たりとかしてドキドキしたりしないの?」
「うーん、顔が整ってるなぁとは思うけど……」
「年寄りか、お前は」
バッサリと言い切られると悲しい気分になる。
どうせ、年寄りですよ。
「まぁ、あんたの側にはいつもイケメンがいるもんね」
「イケメン?」
「あんたの幼馴染」
肩肘を机に付けながら、麗ちゃんは視線だけ廊下に移した。
廊下にいたのは隣のクラスのわたしの幼馴染。
「あ、祐だ」
すると、祐もこっちに気づいみたいでちらっとこちらを見てきた。
別に笑うわけでも、手を振ったりするわけでもなく見るだけ。
居るな、っていう確認だと思う。
いつもと同じでダボダボの灰色のパーカーに無気力な感じ。
そう、これが私の幼馴染
日向祐(ひゅうがゆう)だ。
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