第1章

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「ってなわけで彼氏がさー。本当に下手なんだよねー」 「下手って何が?」 お昼も食べ終わってお昼休み特有のガールズトークが始まった。 わたしと一緒にいるのは、佐々木麗(ささきれい)。 麗ちゃんとは高校に入ってから仲良くなってほぼ毎日一緒にいる。 長くてキレイな黒髪をもつ麗は、 容姿端麗で成績もいつもよくて、家もお金持ちらしい。 それで、ちょっと周りと比べると大人っぽい。 何でわたしと友達になったかよくわからないけど、面倒見のいい麗ちゃんとすごく性格が合う。 「何がって、コレだからひなは……」 ふう、とため息混じりに麗ちゃんは話す。 いっつもこんな感じで肝心なところは教えてくれない。 「だから、何が下手なの?」 ぷぅっと頬を膨らませて聞くと、麗ちゃんが口を開いた。 「だから、エッチよ!エッチ!」 「……へ?!」 何の躊躇いもなしに言う麗にビックリしたというよりは、こっちまで恥ずかしくなるような思いだ。 「きょ、教室でそんなこというなんて、ハレンチだよ」 わたしが赤い頬を手で押さえながらそう言うと、 また麗ちゃんはため息をついた。 「あんたねぇ、そんなことでいちいち赤くなっててどうすんのよ」 「そんなことって……」 「今時、高校生で初恋もまだなんて珍しいわよ」 そうなのだ。 わたし、望月比奈(もちづきひな)は現在高校1年生なのにも関わらず、15年間恋というものを知らない。 周りが恋や愛やなんて言ってるけど、わたしにはさっぱり分からない。 「かっこいい人見たりとかしてドキドキしたりしないの?」 「うーん、顔が整ってるなぁとは思うけど……」 「年寄りか、お前は」 バッサリと言い切られると悲しい気分になる。 どうせ、年寄りですよ。 「まぁ、あんたの側にはいつもイケメンがいるもんね」 「イケメン?」 「あんたの幼馴染」 肩肘を机に付けながら、麗ちゃんは視線だけ廊下に移した。 廊下にいたのは隣のクラスのわたしの幼馴染。 「あ、祐だ」 すると、祐もこっちに気づいみたいでちらっとこちらを見てきた。 別に笑うわけでも、手を振ったりするわけでもなく見るだけ。 居るな、っていう確認だと思う。 いつもと同じでダボダボの灰色のパーカーに無気力な感じ。 そう、これが私の幼馴染 日向祐(ひゅうがゆう)だ。
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