第1章

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ただ廊下を通っただけらしく、周りの友達と一緒にいなくなってしまった。 それだけなのに、クラスの女子は、 「今さっき通ったの、隣のクラスの男子達だよね?」 「あの集団かっこいいよねー。でも、1番は日向くんだけど」 「イケメンだよねー、ミステリアスな感じもまたいいし」 すごい評判がいい。 クラスだけでなく、学校中の注目の的だ。 昔から美形っていうか、かっこいい顔してたけど中高でさらに磨きがかかったように見える。 「モテモテね、日向くん」 「そうだね」 確かにモテモテだ。 「ミステリアスな感じかぁ。あたしは絶対無理だな」 「何で?」 「カタカナでミステリアスってかっこ良く聞こえるけど、結局何考えてるのかわかんないじゃん」 「そうかなぁ」 確かに何考えてるのか分からないように見えるけど、実際はそのときそのときの感情のクセっていうものもあるし。 理解はしてるつもり。 「ま、あんた達は幼馴染だからお互いのことよく分かってんのよね」 「うん、まぁ、それなりだけど」 ふーん、と麗ちゃんは一息ついて、わたしを見てくる。 「日向くんはどうなのよ?」 「何が?」 「好きな人の候補」 「祐はないよー。だって幼馴染だよ?」 わたしは横に首を振った。 そう、幼馴染。 友達とも違って、恋人とも違う、幼馴染。 「もったいない。あんなイケメンの幼馴染がいたら、恋しちゃうもんだと思ってた」 「みんな少女漫画の見過ぎだよ」 実際は気兼ねなく話せる仲っていうか、兄弟に近い感じだと思う。 わたしが祐のことをそういう風に見れないのは、兄弟の仲で恋愛感情を持たないのと一緒なんじゃないのかな。 「でも、一緒によく帰ってるじゃない?」 「あれは、家がお隣さんだからだよ」 「え?!隣なの?」 「うん。親同士もすごく仲良いの」 歩いてほんの25秒くらいの正真正銘のお隣さんだ。 「あんなイケメンが毎日側にいたら、他の男子なんて霞んで見えるわよね」 ボソッと小さな声で麗ちゃんは言った。 呟くくらいの小さすぎる声は、わたしの耳には聞こえて来なかった。 「麗ちゃん、何か言った?」 「ううん、何にも」 麗ちゃんは首を振って、そのまま足を組換えた。 そんな話をしていたら、お昼休みなんてすぐに終わってしまった。
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