第1章

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***** ______放課後。 いつも、下駄箱の隅に身を潜めるように祐はいる。 壁に寄っ掛かり、視点の合わないボーッとした目で。 祐はわたしが来たのに気づくと顔を上げて、 「帰ろ」 っと、たった一言口にする。 わたしは「うん」と言って頷いて、上履きから革靴に履き替えた。 わたしが靴を履き替え終わると、祐はそそくさと歩き始めた。 わたしもその後を追う。 わたしと祐はこうして一緒に帰っている。 別に一緒に帰るって決まっているわけじゃない。 小学校から一緒に帰ってるから、何と無くって感じで。 もちろん、部活や何やらで一緒に帰らない時も多々あるけど、だいたいは祐が下駄箱でわたしを待っててくれる。 「もう、歩くの早いよー」 「ん」 祐は歩く速度を少しだけ緩めて、わたしに合わせてくれた。 一緒に帰るからって特別なことはなくて、いつも他愛の無い話をするだけ。 「今日、お昼何食べた?」 「………」 「わたしのお弁当、海老フライだったんだよ。いいでしょ?」 祐が何を食べたか思い出してるのにも関わらず、わたしは自分のしたい話を進める。 それに対して、祐は「へえ」と相槌を打つだけ。 適当な相槌なんだけど、一応聞いているんだよね。 「あ、今日、家いってもいい?」 「……散らかってるけど」 「ゲームしたい!」 「ひな、弱いからヤダ」 確かに弱いんだけどさ、ヤダなんてそんな言い方しなくてもいいじゃん。 「ケチんぼ」 わたしは、下唇を尖らせた。 その顔を見て、祐はしょうがない、とでも言うような顔で、 「はいはい」 と面倒くさそうに言った。 その後には"いいよ"って言葉が隠されていることをわたしは知っている。 いつも嫌そうに言うのに、結局はわたしのワガママを聞いてくれるのだ。
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