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______放課後。
いつも、下駄箱の隅に身を潜めるように祐はいる。
壁に寄っ掛かり、視点の合わないボーッとした目で。
祐はわたしが来たのに気づくと顔を上げて、
「帰ろ」
っと、たった一言口にする。
わたしは「うん」と言って頷いて、上履きから革靴に履き替えた。
わたしが靴を履き替え終わると、祐はそそくさと歩き始めた。
わたしもその後を追う。
わたしと祐はこうして一緒に帰っている。
別に一緒に帰るって決まっているわけじゃない。
小学校から一緒に帰ってるから、何と無くって感じで。
もちろん、部活や何やらで一緒に帰らない時も多々あるけど、だいたいは祐が下駄箱でわたしを待っててくれる。
「もう、歩くの早いよー」
「ん」
祐は歩く速度を少しだけ緩めて、わたしに合わせてくれた。
一緒に帰るからって特別なことはなくて、いつも他愛の無い話をするだけ。
「今日、お昼何食べた?」
「………」
「わたしのお弁当、海老フライだったんだよ。いいでしょ?」
祐が何を食べたか思い出してるのにも関わらず、わたしは自分のしたい話を進める。
それに対して、祐は「へえ」と相槌を打つだけ。
適当な相槌なんだけど、一応聞いているんだよね。
「あ、今日、家いってもいい?」
「……散らかってるけど」
「ゲームしたい!」
「ひな、弱いからヤダ」
確かに弱いんだけどさ、ヤダなんてそんな言い方しなくてもいいじゃん。
「ケチんぼ」
わたしは、下唇を尖らせた。
その顔を見て、祐はしょうがない、とでも言うような顔で、
「はいはい」
と面倒くさそうに言った。
その後には"いいよ"って言葉が隠されていることをわたしは知っている。
いつも嫌そうに言うのに、結局はわたしのワガママを聞いてくれるのだ。
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