第1章

2/2
前へ
/14ページ
次へ
「やっぱり今の流行はスポーツ系よ。でもメジャーなのは面白くないわね……」 「そうですねえ……。それに今回の同人誌には、できるだけたくさんの話を描きたいので読み切りがいいですよね」    空が橙色に染まり、明かりをつけていない教室で、二人の少女が熱心に話し合っている。 「マイナーなのがいいかしら。 あ!新スポーツを考えるのはどう?」 「え、例えばどんなのですか?」 「うーん……、わからない!ユエちゃんは?」 「えっ、私ですか……言い出したのはモモ先輩なのに……」  ユエと呼ばれた少女と、モモと呼ばれた少女は向かい合ってはなしていた。  二人以外に人はおらず、教室はユエとモモの話し声だけが響ている。 「はっ!でしたら魔法を使わないスポーツマンガなんてどうでしょう!」  ユエは座っていたいすを倒すほどのいきおいで立ち上がる。 モモもまけじといきおいよく立ち上がり、 「いいわね!新しい?それだったらスポーツ以外でも、魔法より科学が発展した世界とか、魔法を使うことができない主人公とかいろいろ応用がきくわね」  そしてモモは満足そうにうなずく。 ユエの愁いに満ちた顔に気づかずに。 「じゃあ、一、二個くらい話考えてきてちょうだい。 すぐにでも作画作業に入れるようにがんばりましょう」 「あ……はい……」  ユエはモモに手を振り、教室を出ていく背中を見送った。 誰もいなくなった教室で一人、立ちすくんでいる。  その顔は怒りや悔しさといった情念が表れていた。 (どうして……)  ユエの思念は言葉に変わる。 「どうして、能魔なんかに……っ」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加