一週間前

2/8
前へ
/14ページ
次へ
 今からちょうど一週間前。  この日も同じようにモモがユエの教室を訪ねてきた。 会話の内容は大体同じ。 「先輩も、もうすぐ卒業ですね……」 「そうね。つっても高等部に上がるだけだけどね。校舎もそんな遠くないし」  そんな会話をひとしきりした後、モモはユエの頭にポン、と手をおき「じゃあね」と言って二年三組の、まだ生徒が数人残る教室を去っていった。 (さて、私も帰りますかね)  ユエが自分の机に向かおうとすると、 「ユエちゃん」  女子生徒が数人、集まってきた。 「部活の勧誘ポスター、かいてくれた?」  ユエは「はいはい、ちょっと待ってください」と言いながら自分の机の引き出しをあさった。 そして数枚の画用紙を取り出す。  画用紙には、おもに運動部の活動内容、活動日、勧誘の言葉を一、二言、それぞれの部活のイラストが描かれていた。 「うわっ、やっぱじょうずだね!プロ並みだよ!」  女子生徒数人はポスターを受け取ると、次々に感嘆の声を漏らす。 「急に頼んじゃってごめんね。ところでユエちゃん……」 「はい?」  女子生徒数人は皆、不安そうな顔をしている。 「ユエちゃんって、モモ先輩と仲いいの?」 「はい」  ユエが答えると女子生徒数人だけでなく、教室にいた生徒全員が驚愕した。 「え、そんな驚くことですか?」 「驚くよ?あの先輩変な噂があるんだよ!」  女子生徒たちの剣幕に若干引きつつも「変な噂って……」一応返事をする。 「暗殺用の武器が好きだって聞いたんだけど……」 「たしかに本当ですけど、私もにたようなものですよ」 「え、じゃあユエちゃんは?」 「私ですか?私はアニメに出てくる武器ならなんでも好きですよ」  女子生徒は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに「あー…そっか……」とつぶやき、 「私たちはてっきりユエちゃんがあの先輩に目、つけられたのかと。ま、違うんならいいや。はぁー心配して損した」  そういって女子生徒たちはユエの前から退いて、それぞれ帰り支度を始めたり、友達と話し始めたりしていった。 (何だったんでしょう?)  ユエは今度こそ自分の机に向かい、素早く帰り支度をすませて教室を出た。  廊下には部活に行く者、帰ろうとする者、ほかのクラスの友達を待っている者などでにぎわっている。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加