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今からちょうど一週間前。
この日も同じようにモモがユエの教室を訪ねてきた。 会話の内容は大体同じ。
「先輩も、もうすぐ卒業ですね……」
「そうね。つっても高等部に上がるだけだけどね。校舎もそんな遠くないし」
そんな会話をひとしきりした後、モモはユエの頭にポン、と手をおき「じゃあね」と言って二年三組の、まだ生徒が数人残る教室を去っていった。
(さて、私も帰りますかね)
ユエが自分の机に向かおうとすると、
「ユエちゃん」
女子生徒が数人、集まってきた。
「部活の勧誘ポスター、かいてくれた?」
ユエは「はいはい、ちょっと待ってください」と言いながら自分の机の引き出しをあさった。 そして数枚の画用紙を取り出す。
画用紙には、おもに運動部の活動内容、活動日、勧誘の言葉を一、二言、それぞれの部活のイラストが描かれていた。
「うわっ、やっぱじょうずだね!プロ並みだよ!」
女子生徒数人はポスターを受け取ると、次々に感嘆の声を漏らす。
「急に頼んじゃってごめんね。ところでユエちゃん……」
「はい?」
女子生徒数人は皆、不安そうな顔をしている。
「ユエちゃんって、モモ先輩と仲いいの?」
「はい」
ユエが答えると女子生徒数人だけでなく、教室にいた生徒全員が驚愕した。
「え、そんな驚くことですか?」
「驚くよ?あの先輩変な噂があるんだよ!」
女子生徒たちの剣幕に若干引きつつも「変な噂って……」一応返事をする。
「暗殺用の武器が好きだって聞いたんだけど……」
「たしかに本当ですけど、私もにたようなものですよ」
「え、じゃあユエちゃんは?」
「私ですか?私はアニメに出てくる武器ならなんでも好きですよ」
女子生徒は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに「あー…そっか……」とつぶやき、
「私たちはてっきりユエちゃんがあの先輩に目、つけられたのかと。ま、違うんならいいや。はぁー心配して損した」
そういって女子生徒たちはユエの前から退いて、それぞれ帰り支度を始めたり、友達と話し始めたりしていった。
(何だったんでしょう?)
ユエは今度こそ自分の机に向かい、素早く帰り支度をすませて教室を出た。
廊下には部活に行く者、帰ろうとする者、ほかのクラスの友達を待っている者などでにぎわっている。
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