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ピリリッピリリッピリリッ――。
スマートフォンのアラームがバイブレーションと共に、やかましく朝を知らせる。俺はそれを、朦朧とする中止めると、再び意識を低反発の枕に沈めようと――。
「っといかんいかん」
――しなかった。カーテンを勢い良く開放して、窓の外を見る。うん、今日は雨具が必要そうだ。
今日は始業式、二年生となって初の登校日だが、それにそぐわない生憎の入道雲である。外を眺めながらも着替えを済ませ、一階へと降りてリビングへ向かう。テレビを付けると、表示された時刻は、″6:11″とまだまだ余裕がある。因みに、学校までの登校所要時間は約二十分だ。
報道番組を横目で見ながら菓子パンを腹に収め、顔を洗い、鞄を肩にかける。此処までで″6:21″。登校にはまだ早いが、玄関に向かい覗き穴を覗く。これだけ早ければ″アイツ″も起きてはいないだろう――。
「……」
と思ったが、それはどうやら甘い考えだったようだ。
居た、居やがった。人畜無害な笑顔と、落ち着いたブラウンのセミロングが特徴的な僕の宿敵″幼馴染み″が。
「くそ、何だってこんな早い時間から……こうなったらプランBで……いやダメだ」
裏口から出ても結局は玄関の前を通ることになる。それではアイツに見つかってしまう……それだけは避けたい。
僕は幼馴染みを避けている訳ではない。回避したいのは別のものだ。
「仕方ない、プランCだ」
あまり気は進まないが、幼馴染みと鉢合わない為には致し方ない。僕はつい先程出た筈の自室に戻り、窓の前に立った。目の前には、背の高い桜の木が一本、堂々とその姿を主張している。膨らんだ蕾達は、そろそろ開花しそうだ。その桜の枝の一つ、最も太い枝には、ロープが結び付けられてあった。去年使ってからずっとあのままだが、まぁ大丈夫だろう。
僕は動きやすいよう、ブレザーを脱ぎ鞄に仕舞うと、玄関前の幼馴染みに気取られないよう窓を静かに全開した。大きめの窓は、僕一人なら飛び出すのは安易だ。
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