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僕が覚悟を決めかねていると、背後で扉が開く音がした――この家に住んでいるのは、僕を除くと一人。
「お兄様お早うございます……今日はお早いのですね」
腰まで届く黒髪、綺麗に横一文字に揃えられた前髪。全体として、整った顔立ちとは似つかない、動物がプリントされたパジャマ。考えるまでもなく、僕の妹『詩渚(シイナ)』だ。
これ以上ぐずぐずしていると、この妹にも邪魔されかねない――僕は瞬時に覚悟を決めた。大丈夫、失敗してもたかが二階建て、うちどころが悪くても骨折するくらいだ。
「……っ! お、お兄様何を!?」
足を窓枠にかけた僕をみて、妹がたじろぐ。少し罪悪感を覚えたが、やめることはしない。
「――行ってきます!」
「お兄様っ――」
そうして僕は、妹の悲鳴にも似た声を背中に受け、窓から飛び出した。
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