0人が本棚に入れています
本棚に追加
フラグ 2
作戦は見事成功を収め、僕は一人で登校するという目的を見事果たした。
全く、始業式に幼馴染みの女の子と登校なんてベタベタのテンプレ展開は御免被りたい。
だが、安心するのにはまだ早い。始業式の日というのは、往々としてテンプレの罠が大量に設置されているのだ。
例えば、このT字路。閑静な住宅街は碁盤の目状に整備されており、上空から見ると爽快らしいが、二つ以上目を跨ぐ家も少なくない。そうした家がある路地では、T字路がいくつも並んでいるのだ。
そして、それにお馴染みのテンプレートと言えば、″パンを銜えた少女が路地から飛び出してくる″だろう。
遅刻ギリギリで焦った女生徒が、トーストを食べながら走ってくるという古典的なものだが、無論対策済み。これだけ早ければ焦って登校する生徒など居る訳がない。
だが、警戒するに越したことはないだろう。
僕はT字路が続く道路を、一つ一つその角から確認していった。よし、誰も居ないな。
そして登校ルート最後のT字路。ここを切り抜ければ、後はもうゆっくり登校するだけだ。僕は先程までと同じ様に角から覗き込み――。
「よし、誰も居ない。ミッションコンプリート……ん?」
一人でサムズアップした直後。
タタタタッ――何かが近づいてくる音。僕は咄嗟に体を、延々続く塀の角に隠した。何かわからないが五感が危険を訴えている!
「いやあああああああああああっ!?」
タタタタダダダダダッ――ガンッ!
「……は?」
悲鳴と共に近づいてきた音は路地を飛び出し、今、僕の目の前で消えた。
「え、ちょ、ええっ!?」
僕の目の前には、少女が仰向けに倒れていた。真紅の髪が一瞬血のように見えてギョッとする。
説明すると、突然飛び出してきたと思えば、そのまま塀にぶつかって気絶したのである。訳がわからない。
制服からして、ウチの学校の生徒のようだが……。
最初のコメントを投稿しよう!