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「そういや、今日転校生来るんだってな」
「なっ……軽井沢、それは本当か!?」
「お、おう本当だぜ……何、気になっちゃう?」
椅子を鳴らして立ち上がった僕に驚きつつも、興味を持ってもらえたからだろう、ニヤッと口角を吊り上げる。
さて、問題のその転校生とやらの性別だが。男なら問題はないが……。
「男か女か」
「女の娘だ。それも相当上玉らしい」
「……厄日だ……」
僕はガックリと項垂れた。
始業式の日に、転校生。それも女ときた。
……それが軽井沢の口から聞かされたことも含めて、何と言うテンプレ展開。今日はやけにテンプレが多い。
「だが、なんでこんな学校に?」
「さぁ。そこまでは俺も知らんがね」
更に情報を引き出そうとしたが、呆気なくそれは終わる。
僕らの通う″北渡高校″は、生徒数約260人の、町の小さい高校だ。クラス替えすら無く、同学年の顔と名前は大体覚えているような高校だ。
田舎というわけでは無いが、わざわざ引っ越して来るような町でもない……転校生が来る謂れはないのだ。
「ま、そんなこと気にする必要ないっしょ。気にするべきは……ビジュアルだ」
僕は気にするんだ、という言葉は飲み込んだ。
「上玉なんだろ?」
「ああ、かなりのな。それこそ翠華ちゃんにも引けを取らない位の美少女らしい。早くお目にかかりたいぜ」
軽井沢は如何にも高揚した様子だ。
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