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始業式が終わり、LHR。結局、翠華が教室に姿を見せたのは″8:00″頃で、背中に突き刺さるような視線を感じる。
「なぁ、翠華ちゃんずっとお前のこと睨んでるぞ……」
「わかってる」
肩を仰ぐように後ろを見ると、ジト目でこちらを睨む翠華。仕方ない、後で謝っておこう。
それよりも今は転校生だ。始まってしまった展開はどうしようもないが、せめてその後は止めねばならない。
「実は、このクラスに転校生が来ることになりました!」
「「おおおおおおおおお!」」
担任の言葉に、クラスがざわつく。
既に噂は広がっており、この雄々しい歓声は転校生というより、美少女への期待が大きい。実際、女子は苦笑い気味である。
「では、入ってきてください!」
――その少女が入ってきた瞬間、ざわめきは静寂へと変わった。
皆、息を飲んでいるのだ。軽井沢が唾を大袈裟に飲み込み、「ゴクッ」という音が聞こえた。
男子だけではない、女子もまたその転校生から目を離せないで居るようで、普段は騒がしい女子も今ばかりはこの空気を壊すことは出来ないでいた。文字通り、息を呑む美しさだ。
「……ソウエンジメイカです。宜しく」
黒板に″奏演寺 鳴歌″と書くと、少し緊張した面持ちで自己紹介をする。変わった名前だ。
その透き通った声に、皆が感嘆を漏らす。
「鳴歌ちゃん、イイね。……イイね」
「煩いわ」
だが、事実だ。本当に地毛なのだろうか疑ってしまう程綺麗に、真紅に輝く髪は腰まで長く、良く見れば左右をリボンで纏めている。俗に言うツインテールとは違い、見た目にはロングヘアだ。華奢なボディラインがブレザーの上からでも見て取れ、顔のパーツをスッキリ纏まりがある。どこをどうとっても美少女だった。
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