【洗剤】

3/5
前へ
/29ページ
次へ
「では早速今日から研究します!」 研究開発部の課長は、腕が鳴らんばかりに椅子から立ち上がった。 2階の北側の一番奥が研究室だ。 課長は白衣を身にまとい、 研究室の扉をあける。 「部長、会議の結果、なんでも落ちる洗剤の開発に決まりました!」 部長は水色の液体を三角フラスコを振りながら、振り向いた。 「なんでも落ちる洗剤?」 「そうです。なんでも」 「簡単そうで難しい洗剤だなぁ」 「どうでしょう?」 「まぁ、決まったんなら、ねぇ?」 フラスコの液体はエラーだったようだ。 「なら、君がリーダーでやってみるといいよ」 「はい!」 部長は自分の研究に夢中のようだった。 課長の指示のもと、 洗剤の研究が始まった。何度ものトライ&エラーを繰り返しながら、毎日毎日、洗剤の追及を行った。 温度やテクスチャー、香りに至るまで、様々な条件下でテストをした。 しかし、でき上がったのものは、 やはり、別段目新しくもない、少し洗える物の幅が広いだけの普通の洗剤だった。 「もっと、特徴のある洗剤は作れないだろうか……」 課長は深夜まで研究室に残り、 各メーカーが出した文献や資料を読み漁っていた。 そんなある日。 「君が研究している洗剤に、これを混ぜてくれないかい?」 部長は満面の笑みで、以前エラーをした水色の液体の入ったフラスコを持っていた。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加