【連鎖事件】

2/2
前へ
/29ページ
次へ
愛娘が通り魔に殺されて,10年が経った。 もし娘が生きていたら, 今年,振袖を着た綺麗な姿を見せてくれただろう。 私たち夫婦は, 娘のことを一日たりとも忘れることはなかったし, むしろ, 日に日に犯人への憎悪が増していくだけだった。 そんな犯人が, 刑期の10年を経て出処するという。 「娘の命を奪い, 私たちの人生をめちゃくちゃにしたのに, たった10年で出てくるだなんて……! 許せない……!!」 私たち夫婦は娘の敵をうつために, 出処した犯人の居所を突き止め, 用意しておいた包丁で 10年の怨みを込めて殺した。 犯人が最期に言ったのは, 「申し訳ない。しかし,殺した娘の顔は,もう覚えていない――……。」 だった。 そして私たちも,同じ罪を犯した者として 10年を壁の中で過ごすことになった。 10年がたった。 すっかり変わってしまった世の中に戻って来た私たちは, 誰も知らない土地で身を隠すように生きていた。 そんなある日,突然,女性が一人で訪ねてきた。 「ご要件は……」 と私が尋ねると, 女性は絞り出すような声で言った。 「父の命を奪い, 私たちの人生をめちゃくちゃにしたのに, たった10年で出てくるだなんて……! 許せない……!!」 【END】
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加