2人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、執拗に攻めてくるわけではなく、
むしろその手に、私への関心など微塵も感じられない。
私の入浴なんて、年に一度ぐらいであるし、
それも、私の身体をタオルのようなもので
拭いてくれるときぐらいなのだ。
それまで身体は薄汚れ、埃を被ることもある。
私の親戚などは、暗闇の中で引っ張られるそうだ。
そして同じように、漆黒の部屋の中では、
ぶんぶんと腕を振り回し、必死になって探し出された上に、
また引っ張られるのだそうだ。
どんなに怖いことだろう。
想像しただけでも涙が出そうだ。
声なんて、とても出ない。
出したとしても、誰も助けてはくれない。
仲間は皆、自分では動けない。
しかし、私たちには神様が存在する。
私たちが、暗闇の中でその指先に弄(まさぐ)らていると、
頭上から、まるで世界が変わったかのように、
パアッと明かりが降り注いでくるのだ。
そうするとその手は、瞬く間に退き、離れる。
そして私たちは解放される。
私たちはこれを、神秘の光と呼んだ。
……外を見ると、すでに薄暗い。
街路灯がチラチラと灯り始めた。
いつものように、その手が私に向かって近づいてくる。
どんどん、どんどん……
最初のコメントを投稿しよう!