その恋はいつか 1

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俺は、この人を好きになる。 そう、思うんだ。 ただ、なんとなく。 俺の名前は、夢多薫(ゆめたかおる)。 A大、文学部の1年。18歳です。 女の子っぽい名前だと思っているだろ、立派な男なんだからな。 「おい、置いていくぞ」 「わっ!ちょ、ちょっと待ってよー」 今俺の隣にいるのは、4つ上の先輩、速俺水圭(はやみけい)。 A大、医学部の4年。秀才でものすごくモテて、その上お金持ちときた。 そんな、ものすごい彼と出会ったのは、俺が高校3年生の時だった。 その時は、兄と2人暮らしだった。 血の繋がらない兄で、父親が再婚した人の息子さん。 俺の本当の母親は、俺が生まれてすぐに死んだ。 そして、両親が新婚旅行に行っているときに、事故で亡くなった。 悲しさと寂しさで押しつぶされそうなとき、兄が俺のそばにいてくれた。 こんな手間のかかる、ガキなんかさっさと施設かどこかに預けちゃえばいいのに、結局、高校生になるまで育ててもらった。 高校3年の時、俺は進学しようと思っていたのだが、まぁ、成績があまりよろしくないようで、見かねた兄が家庭教師を付けた。 それが、速水圭さんだった。 兄とは、中学からの親友でよく一緒にいたらしい。 「薫、俺の親友の圭だ。今日からこの人が家庭教師をやってくれるよ」 「速水圭だ。よろしく」 「夢多薫です。よろしく」 第一印象は、なんか怖い人だなぁ思った。 いや、本当に怖かった。 「これから毎回テストをする。もし、満点取れなかったら宿題を倍にする。満点が取れるまで、どんどん倍にしていくからな」 なんかの棒をぺしぺしと叩きながら言っていた。 2時間ほど、教えてもらいテストをする。 まぁ、満点なんて取れるわけねぇよ。 「25点…お前、よく高校に入れたし進級出来たな」 「うるさいなぁ。俺はやればできるんだよ」 「じゃあ、今やれよ」 「ううっ」 まったく速水さんの言う通りです。 今までぎりぎりだったのに… 「ったく…このままじゃ、優斗と同じ大学に入れねぇぞ」 「はい」 俺の答案用紙を見つめてそう言った。 俺は、兄と同じ大学に行くつもりだった。 どうしても、一緒にいたくて… だって、俺の初恋の人は…血の繋がらない兄、夢多優斗(ゆめたゆうと)。 相手が男だってわかっている。 兄だってわかっている。 でも、憧れが…好きへと変わっていた。
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