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「や、あ、もう…野崎さん…」
私は思わず椅子でもなく、その場にしゃがみ込んだ。
本当に一気に力が抜けてしまったのだ。
「桐谷さん?大丈夫ですか?わ、具合でも悪いんですか?やだ、わ、どうしよう…」
私の脇で野崎さんが慌てだす。
「…ごめん。何でもないの…。ちょっとホッとして…」
「…ホッとした?」
野崎さんは首をかしげる。
わけがわからないのは当然だ。
私はデスクの縁(フチ)に手を着いてゆっくりと立ち上がった。
そして、一度大きく深呼吸して呼吸を整えた。
「…野崎さん、こんな時間にどうしたの?」
平静ならすぐに出てくる質問がやっと言葉になった。
ここに彼女が来ること自体珍しいのに、こんな時間にどういうことだろう。
「部長から…菊森室長に資料を持って行くように頼まれたの。私、もう帰るところだったから…自分から引き受けたんです。…桐谷さんにも会えるかな…と思って」
…そうだったんだ。
「そっか…。室長は出掛けてるからいないけど、デスクに置いとくね。明日野崎さんが持って来てくれたこと、伝えておくから」
「…はい」
彼女は返事をしながら室長のデスクを見つめた。
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