1582人が本棚に入れています
本棚に追加
二人でぼんやりと室長のデスクを見つめていると、最初に気を取り直したのは野崎さんだった。
「そういえば…本当にびっくりしてたみたいだけど、何かあったんですか?」
彼女は私を振り返って言った。
「…ううん。何でもないの…」
私は笑顔を取り繕(ツクロ)ってみたけれど、野崎さんは怪訝な表情で私を見つめ返した。
「…何でもないようには…見えませんけど。桐谷さん、水くさいです」
「…え?」
「私…桐谷さんは初めての友達で…すごく信頼もしてるし、大好きなんだけどな…。あ、でも、言いたくないこともあるから別にいいんですけど。…まだ仕事、終わらないんですか?」
一瞬寂しそうな表情を浮かべた野崎さんが笑顔をつくって顔を上げた。
『…初めての友達…』
沈んでいた心が、じんわりと温かくなる。
私の強張った顔にも自然に笑みが浮かんだ。
最初のコメントを投稿しよう!