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空は灰色に染まっていた。まだ昼間だというのに、辺りには不穏な空気が立ち込めている。
そこにあるのは空まで届く、巨大な塔。天辺は雲に隠れて見えない。
ここは通称『眠り姫の塔』。DDSを利用したRPGの一つだった。よくあるRPGで、塔に捕らわれた眠り姫を、モンスターを倒しながら救出するというものだ。単純なゲームではあるが、公開から半年経ってもいまだ攻略した者はいなかった。
それだけ掛かっても攻略できないのならば飽きられそうだが、倒したモンスターを自分の装備にカスタムできる仕組みは、主に中高生に受けて人気を博していた。
また、塔に掲げられた眠り姫の肖像画は美しく、人気の一因となっていた。
その日、シュウも『眠り姫の塔』に来ていた。
ここ二ヶ月、このゲームにハマって毎日のようにプレイしている。誰も攻略できていないこのゲームに、負けず嫌いの血が燃えた。
といっても、シュウがDDSのゲームを始めたのは三ヶ月前のことだ。最初の頃はスポーツゲームや格闘ゲームをしていたが、向いていないことに気付き、RPGでもやってみるかと思った矢先にこの『眠り姫の塔』と出会った。
誰も攻略したことのないゲームに我こそ、と意気込んだがそう甘くはなかった。アイテムを集めるのも一苦労だった。それでもひたすらモンスターを倒していくというのが性に合って、いまだ続けていた。
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