第1章 少女の目覚め

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 シュウは一心不乱に剣を振っていた。  動いていないと思考に飲み込まれそうだった。現実世界のことなんて考えたくもなかった。  ――母の涙  ――兄の後ろ姿  ――無機質な顔の並ぶ教室  その全てをなぎ払うように、剣を振るった。  モンスターを全部倒して、剣を降ろした。シュウの息は上がっている。肩は大きく上下している。でもそのおかげで、さっきまで考えていたことは思考の彼方へ追いやられていた。  シュウは回復の泉へ足を向けた。噴水のように湧き出る水に直接口を付けて、水を飲む。  その時、泉の淵に何かあるのに気が付いた。右手の人差し指に触れたそれは、見てみるとスイッチのようなものだった。こんなものがあるなんて聞いたことがなかった。シュウは少し悩む。これを押したらどうなるだろうか? まぁヤバそうになったらリアルに戻ればいいかと思って、シュウはそれを押した。  ガコンと大きな音がして、泉が動き出した。シュウは慌てて一歩下がる。現れた空間にいたのは――  髪の長い少女が横たわっていた。小学生くらいだろうか。小さく丸まって、気持ち良さそうに寝息を立てている。  一瞬、新たなモンスターかと思ったシュウだが、よくよく見れば人の形をしている。プレイヤーのようだ。 「おい、大丈夫か?」  シュウは肩を揺すった。少女はうーんと唸って、ぱちっと目を開けた。 「わぁ! 見つかった!」  そう言って飛び起きた少女の頭は、シュウの顎にクリーンヒットした。お互い痛みに悶絶する。若干涙目になりながらも、一足早く回復したシュウが声を掛けた。 「いってぇなぁ……。おい、大丈夫かお前」  少女は額を押さえながら涙を浮かべていた。 「うん……大丈夫……。あー見つかっちゃったぁ」 「お前、プレイヤーか?」  少女は首を傾げた。 「ん? 私はここででかくれんぼしてただけだよ? 隠れてる間にいつの間にか寝ちゃったー」
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