春に殺された少女

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少女の白い肌に、雫が降りかかった。 頬が濡らされても、少女は拭おうともしない。 ただじっと、目を閉じている。 雫は、青年の涙であった。 青年は、泣いているのであった。 ほんの数日前、青年が少女に会ったときには、少女の身体は温かかった。 潤んだ瞳で青年を見つめ、抱きしめてやると頬を赤く染めるのだった。 ところが今、少女は白い顔のまま、眠っている。 実は少女は死んでいるのだが、青年には、よくわからなかった。
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