春に殺された少女

3/5
前へ
/5ページ
次へ
少女は春に殺された。 穏やかすぎる陽気が、少女に幻を見せた。 幻は少女を呼んで、巧みにその心を絡めとった。 風が、花の香りを運んできた。 梅の花の香りだった。 その香りに誘われて、真夜中、少女はふらふらとひとり散歩に出てしまった。 愚かな幻想に連れて来られた先には、一輪の梅の花が咲いていた。 本当は、これも春の見せた幻に過ぎなかったのだけれど、少女は気付かなかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加