春に殺された少女

4/5
前へ
/5ページ
次へ
白い花に手を伸ばして、一歩前へ歩み出たその瞬間、少女の身体は水に包まれた。 そこに花などなかった。 あったのは、冷たい川だけであった。 少女はようやく自分が幻を見ていたことに気付いた。 帰らなければ、と思った。 早く、早く、青年の元へ。 しかし、時すでに遅し、少女の身体は川に沈んだ。 息ができなくて、苦しくて、思わず水を飲み込んでしまった。 冷たい水が少女の身体を駆け巡り、温かな血を、冷たくした。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加