第1章

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 確かなモノ、それは自分だ。自分の存在だ。その理由だ。価値だ。それらは或いは自己の存在証明と言い換えても良いかもしれない。  これは何も僕だけに限った話ではなく、全ての人間誰しもが自らの存在を否定はしないからだ。  自ら。自ずから。  たとえ疑う事はあっても、自分が生きてない、ここには居ない、他の誰から一切観測されていない。と決めつけてしまう事はまず在り得ない。  何故ならそれをそう決めつけてしまえる理由など無いし、そんな事要らなくても抑以前に証拠がない。  望まない事実に人は証拠付けなどしない。それは確かでも不確かだ。  『自分も理想も、虚構だ。』と言ったのはフリードリヒ・ニーチェだったか。哲学者であり、同時に極度の虚無主義者(ニヒリスト)でもあった彼ぐらいならこうも言えたかもしれない。 ――他者を以って自らを観測し、自らを以って虚構を観測する。 と。  何も、逆説を弄する迄も無くこれは確かだ。不確かな存在よりよっぽど明確で正確なのかも知れない。
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