101人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
ま、まぁ、何にせよ ここまではえぇんや…ここまでは。
けど、この人だけは 何か違うんや。
「山崎、起きたんだな。」
チラリと此方に視線を向け、"鉄仮面"がボソリと言った。
だから、
「お陰様で寂しい目覚めでしたわ。」
と、少しばかり嫌味を言う……って、オィッ!
自分で話を振った癖に、既に"鉄仮面"の視線は俺から離れ、隣の仔犬に向けられとる。
その眼差しが気に食わん。
いつも いつも、いっつも…!
可愛くて仕方無い、って。
心配で堪らない、って。
何や 分からんけど…愛娘を見守る父親っちゅうか、仔犬を見守る飼い主みたいな、そんな ほんわかした目で見とるんや。
さも、嘉寿羽の事を一番考えてるんは自分、みたいな雰囲気も気に入らんし、そんな"鉄仮面"に懐いとる嘉寿羽も気に入らん。
俺かて、こないな万屋稼業じゃなかったら、アンタみたいな立場になれる自信あるで?
そんな自信があるから、余計にモヤモヤする…
根拠がない、なんて言わせへん。
嘉寿羽を拾ったのは、俺や。
一緒に寝起きするのかて、俺なんや。
ずっと傍に居れない分、二人で居る時は どんな事かて してやっとる。
そんな俺が、嘉寿羽の一番じゃない筈ないやろ。
それなのに…
当の嘉寿羽は、"鉄仮面"と筆談中って!
「……無視すんなや!」
今、ちょっとだけ架奈の気持ち分かったで。
確かに、自分が言うた事 聞いて貰えへんかったら苛つくわ。
最初のコメントを投稿しよう!