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幾ら急ぎの案件言うても……いきなり大阪行ってこい、ってのはキツいわ。
さっさと帰って寝よう。
あ……その前に報告せなあかんのか。
あの人、寝ててくれへんかな……
ほんま、眠いんやけど。
夜明け間近の京の街を睡魔と戦いながら、急ぎ駆けていた。
漸く見えてきた我が家の門の前に……
……何や、アレ?
閉ざされた門の前に偉い小汚い何かが在った。
野良犬?
いや、犬にしてはデッカいやん。
近付く毎にハッキリする輪郭は、どう見ても人間。
捨て子?
いやいや、何でウチの前やねん。
行き倒れ?
うん、それがピッタリやな。
何の因果か、こないな所で行き倒れとは……残念な奴や。
小汚い行き倒れの前に しゃがみ込んで観察してみる。
いつから風呂に入ってないのか疑いたくなる程、土やら埃やら垢で真っ黒の顔。
勿論、髪は衛生的な輝きではなく……不衛生極まりないテカりを出していた。
こんな状態だから身に付けている着物も、ドロドロのボロボロ。
気の毒やし、何とかしてやりたいんやけど……正直、触りたくないなぁ。
偉い汚らしいんやもん。
……ちょっと、臭いし。
とは言っても、このままになど出来る筈もなく……
「…はぁ~…」
と溜め息を吐いた後、両頬をパンッと叩いて気合いを入れる。
「ヨッ、と。」
バッチい此奴を肩に乗せ、なるべく息を止めながら門の中に入って行った。
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