すすむクン、仔犬を拾う

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鬼の怒声響けば、幸せな夢の中に居た者達だって飛び起きるに決まってる。 「何だ、討ち入りか!?」 ワラワラと、寝呆けた頭で状況を把握しようとする面々が、それぞれの部屋から出て来る。 「おぅ、どうした?」 誰、この人……? さっきまで俺に見せてた姿は幻? 「いや……今、物凄い雄叫びがね?」 「夢でも見たんじゃねぇか?」 地獄の鬼が、一瞬にして爽やか好青年みたいになっとるやないか…… しかも、ちょっと疲れた感じでハラリと落ちてる前髪がなんとも……お姐さん達なら生唾ゴックンもんや。 「へ? でも、皆…起きてるよ、な。」 「夢だろう。」 「ん? だから…討ち入り……かな?」 「……しつこい。」 「……へ?…」 あ、好青年…限界や。 青筋浮かんでるもんな……。 「ゴチャゴチャ煩ぇんだよッ!! 見りゃあ分かるだろうが!俺ぁ、この馬鹿に文句言ってただけだろう! 見てみろ!山崎が抱えてる奴を。 此奴は屯所の前に転がってたから、って怪しい行き倒れを中に連れて来たんだよ!」 鬼が騒げば自然と皆の視線は俺の肩に乗ったままのバッチい存在に釘付けになる訳で…… 何や、こんなに注目されたら恥ずかしいやないか。 心優しき人みたいな? 人として当然の事しただけやのに、照れてまうやないか。 「汚い奴だなぁ~、山崎。」 「生きてんのか、山崎?」 「何か臭いです、山崎君。」 ……何やろ。 俺じゃないのに、俺が言われてるみたいや。 あかん……何か目の前霞んできた。
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