獣になれない弱気な男

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己一の住むアパートは手稲駅から歩いて20分程の場所にあった。 先週の合コンで訪れたはっちゃんの家よりも大学から近く、アパートのすぐ裏にはコンビニとバス停がある。 そして彼の家の中はとてもシンプルで、窓際に置かれたシングルベッドの脇には2人掛けのローソファーとテーブル、そのテーブルの上には大きな金属製の灰皿が置かれていた。 無駄なものが一切ない1DKの部屋は、部屋の間取りや専有面積の割にとても広く感じる。 「とりあえすソファーに掛けて。 荷物は適当に置いていいからね。」 己一は私に気を遣い、早速コーヒーを淹れてくれた。 熱湯を入れて混ぜるだけのインスタントのものだったけど、唐突に家に押し掛けた私に対する彼の優しさがそれを美味しいものに感じさせてくれる。
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