獣になれない弱気な男

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己一はごそごそと、ベッドの脇にあるクローゼットから何かを引っ張り出している。 不織布と薄い塩化ビニールでできたカバーに包まれたそれは、柔らかそうだけどそれなりの重みを醸し出していた。 「とりあえず、予備の布団を出しておくよ。 そうしておけばいつでも休めるし、ベッドから離れた場所に敷けば安心でしょ?」 己一はわざわざ私の寝床を確保するため、クローゼットの奥にしまってあった予備の布団を引っ張り出してくれた。 そしてカバーに包まれたそれをベッドから離れた場所に敷き、自分の寝床との間に距離を作る。 「ねぇ。安心・・・って、何が?」 この質問は意地悪なのかもしれない。 だけど、己一が言った“安心”の意味が曖昧だったから・・・。
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