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「せっかくだから上級生の教室でも覗いてみようかな」
3階まで登ったところで少しだけ寄り道をしてみる。
教室の数は1年生と同じで見た目も変わらない。でも自分たちのいる4階とは何かが違って見えるから不思議。光の当たり加減とか、廊下のタイルの模様とか。
「一年生の教室とあんまり変わらないんだ」
誰もいない教室をのぞき込んでは隣の教室へ移動する。この学校は専門技術を学ぶ工業高校なのでいろいろな学科がある。そのかわり、各学科にクラスはひとつしかない。建築、化学、電気、情報、電子、土木、自動車。私は情報科だ。
何でここを選んだかというと、特に理由は無いの。田舎に住んでいるからケーブルテレビもインターネットも無くて、世界中に繋がるインターネットに興味はあったんだけど、結構大がかりな工事が必要らしくて引いてなかった。自分用のパソコンなんて持ってないからコンピュータなんて全然知らなかった。
そもそも高校進学はあまり興味が無くて、見かねた中学3年生の時の担任が、お勧めの学校だから行ってみたら? と推薦してくれたのがきっかけ。
実際に何を勉強するのか分からないのに決めちゃった。
そもそも電気も電子も情報も全部同じじゃないの?そんなことを思い出しながら一番奥にある教室まで行ってみる。この教室はは建築学科、その向かい側の教室から生徒の話し声が聞こえてきた。
扉を見上げると看板がかけてある、ここは美術室みたい。
「美術部かあ、楽しそうかも」
そっと扉のガラス越しに覗いてみる。何人かの生徒が真剣に筆を走らせていた。目線の先には大きな花瓶と果物。デッサンの真っ最中らしい。
入り口の隣にある掲示板には『新入部員募集中』の張り紙が。そしてその右隣には『←写真部も部員を募集してるよー』A4のコピー用紙に極太黒マジックペンで手書きされた軽いノリの張り紙もあった。
写真部の部室ってここだったっけ? 確か実習棟って言ってたと思うんだけど。
部員募集の張り紙にも場所が書いてないし。美術部と写真部は同じ所でやってるんだ。やっぱり芸術だから同じ場所でやってるのかな。
なのはも来てないし、美術部の人にも少しだけお話を聞いていこう。
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