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「すいませーん、1年生なんですけど見学していってもいいですか?」
「部長、見学希望者がきてますよー」
デッサンをしている部員が部室奥に向かって声をかける。奥で大きなイーゼルに置かれたキャンバスの奥から女の人が出てきた。
「ようこそ美術部へ、私が部長の東雲瑞希です。建築学科3年よ、よろしくね」
腰まで長い絹のような黒髪が綺麗。どこかのお嬢様のような、立ち振る舞いが上品で周りからは良い匂いがする。
「あなた、学科はどちら?」
「えっと、情報学科です」
「あら珍しいわね、情報学科ならパソコン部とかアマチュア無線部とか、普通は機械関係が多いのですけど」
「私はあんまり機械とか得意じゃなくて、すいません」
真っ直ぐに私の目を見て話しかけてくる、ちょっと気まずい。
「うちは決まった部活の日は決めてないの、コンクールまでに作品を仕上げてくれればいいわ」
好きな時間に部活が出来るなら私も入部できそうだけど、どうしようかな。
「ところで何か得意なものはありますの? うちは水彩画も油絵も何でもやりますのよ」
「ちょっと成り行きで写真部に見学に行くことになっちゃって、張り紙を見てここに……」
おしとやかで女神のような顔が一瞬凍り付いたように見えた。「写真部……とおっしゃいました?」
「え、はい。友達と写真部の見学に来たんですけど。そういえば写真部員はいないんですか?」
さっきの写真部部長はきっと野球部のところに行ってるんだろうけど、他の部員が見あたらない気がする。
ざわざわと美術部員達が集まって何かを相談している。急いで片づけをしている部員もいる。
何だろう、物凄いプレッシャーを背中に感じる。
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