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「あ、あなた、ここは美術部なのですけど。なぜ……写真部と間違っているのかしら」
美術部部長の額から脂汗がにじみ出ている。口元がピクピクと痙攣し落ち着かない様子だ。怒りが押さえきれずに顔から漏れだしているみたい。何か気に障る事言ったっけ
「ここの入り口に張り紙があったんですけど……」
最後まで言い終わる前に美術部部長がもの凄いスピードで入り口に向かって移動している。
「ぎゃあああああ! あのクソゴリラ女またやりやがったなああああ!
ゴン! と壁を伝う鈍い振動と共に、廊下から聞こえてくる絶叫が部室全体に響いた。他の部員も急いで入り口に向かう。
私もそれに続いて入り口に向かうと、そこには入り口横の掲示板に頭を押しつけて何かをブツブツ呟いている黒髪の悪魔がいた。
くしゃくしゃに破り捨てられた写真部勧誘のチラシが廊下に転がっている。
部員が慌てて「部長お気を確かに!」となだめている。何だろうこの人たちは……
「だ、大丈夫よ。ちょっと取り乱しただけだから」
部長のおでこが真っ赤になっている。さっきの鈍い音は頭をぶつけた音だったみたい、結構大きく響いたから相当強く壁に頭突きをしたんだと思う。キレると怖い部長さんなのね……だから部員も逃げようとしてたのかな。
「おのれ写真部……私の邪魔をして何度怒らせれば気が済むのかしら……!」
「そこの見学のあなた、写真部はこの部室から反対側の校舎にある実習棟ですわ……」
悪魔から人間に戻りかけている部長さんが親切に教えてくれた。
「えと、ありがとうございます。それと……頭大丈夫ですか?」
「それは私の頭の傷の事かしら、それとも別の意味があるのかしら?」
鋭い眼差しが突き刺さる。これ以上関わらない方が身の為かも。
「美術部なら高校生活をエンジョイ出来ますわよ。夏は函館の夜景を見ながら温泉で合宿、秋は美瑛の丘にいって大自然を見て、冬は世界一の雪質を誇る大雪山のパウダースノー、そしてダイヤモンドダスト……なんて自然は素晴らしいんでしょう」
「えと、あの、じゃあ今日は失礼します」
「ふん、写真部のクソゴリラに言っておいて頂戴、どうせ今年で終わりなんだから大人しく消えなさいって」
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