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雲一つ無い夜空には数え切れない星が浮かんでいる。
天の川も夜空に白いミルクが流れているように真っ白に見える。
マイナス20度近くまで冷え込んだ夜は急いでスキーウェアと手袋、耳当ての準備。これからスキーにいく訳じゃないよ、庭で空を見るの。
吐く息は白い蒸気になり、寒さで肌がピリピリと引き締まってくるのが分かる。さっきまで降っていた雪が庭に降り積もり、真っ白なキャンバスになっていた。
私は雪のキャンバスに飛び込み、大の字になって空を見上げる。
さらさらのパウダースノーが舞い上がって、仰向けになった私の顔を濡らした。
少しだけ雪に埋まると世界から音が消える。雪が音を吸収して周囲の雑音が無くなるんだっておじいちゃんが言ってた。
世界中でたった1人だけになったみたいな、そんな不思議な感覚が好きだ。
極寒の寒空の下で動かずに空を見上げている、普通ならそのまま遭難してしまうようなシチュエーションだけどおかまいなし。だってうちの庭だもん。
冷たく乾いた空気を鼻から吸い込むと、体の中から凍りついてくる感じ。それでも雪に埋まっている体は暖かい。
流れ星。天の川を横断するように流れていく。
「綺麗だなあ。このまま時間が止まればいいのに」
赤、青、黄、紫、白、カラフルな星が空を流れている。
あの時と同じ、星空は今日も変わらず瞬いている。星の色を数えながらそっと目を瞑る。
「……雪」
「……美雪」
誰かが私を呼んでるみたい。おじいちゃんが帰ってきたのかな。そんなはずは無いか、もう夜空の星になっちゃったんだから。
大好きだったおじいちゃんはいつもカメラを持って星空を撮っていた。春も夏も秋も冬も、雨が降っても曇りの日も。いつだって空を見つめていた。「星空の写真は1時間以上じっとしてるだけだから暇なんだ」そういって私に星のことをたくさん話してくれたっけ。
私はおじいちゃんと星を見ているだけですごく楽しかった。
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